PAMELA BOWDEN(パメラー・ボーデン)
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私が彼女の事を知ったのは2003年2月のことでしたが、ドンムアン駅近くの食堂に設置しているTVで可憐に踊っていました。その音楽性と容姿に魅了され、パクブンファイデーンを急いで口へかき込み、近所のテープ屋に走りました。彼女は元々アイドル歌手として活躍していたらしいですがルークトゥンに転向し、現在爆発的にヒットしているらしいです。内容はベスト盤的な作品に仕上がっていますが、アルバムタイトルどおりダンスです。人によっては違うというかもしれませんが、以前BAZOOが同様にモーラム調の曲をハウスと融合させ(アルバムタイトルは確か”2001”)かなり異色を放っていました。 これもルークトゥンとハウスの融合ですがBAZOOより完成された形に仕上がりになっています。 “How are you?Wellcome to Thailand”と英詞(でありながら歌詞カードはタイ文字)の歌から始まる本作は音はハウスでありながらバックの演奏、歌メロ全てがモーラム・ルークトゥンのフレーズで埋め尽くされ、日本でもかなり昔から定番とされているインド音楽や中東の音楽に続く新しい形でのエスニックミュージックを表現していま す。特に全曲にフューチャーされているギターのメロディは正にモーラム!ここは必聴すべき点です。またこの作品の主役であるパメラ。彼女はルークトゥンの歌い方にある音程の上がり下がりの”タメ”の部分や肝心のコブシも完璧でありながら若者にも受け入れられそ うな低俗な(アイドルっぽい)歌い方もするところなぞタダモノではありません。来タイされた中高年のおじ様方なら1度は行かれるパッポン。そこに流れる様々な猥雑な音楽の中にタイトランスというジャンルがあります。これはタイのDJが洋楽や音源サンプリングとモーラムとをミックスして作成しているものですが、一言でいえばこの作品はそんな雰囲気をかもし出しています。このタイトランスというジャンル自体は友人の話によると現在RCAなどでも頻繁に掛けられているらしいですから若い女性でも聴く機会はあると思います。余談ですがこのアルバム最後にボーナストラックとしてリミックスヴァージョンとして全曲をモーラムシンばりに繋いでいます。その繋ぎ方のいい加減さ(強引さ?)がタイっぽくて楽しめます。 |
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モーラムロック ROCK SADERD(ロックサドゥー)
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話によるとタイでは最もポピュラーなモーラムバンドであったRock Saderd。以前私は彼らの名を知らず、曲の印象で”汗臭モーラムバンド”と呼んでいました。彼らの歌うモーラムはとても男臭くて熱く、聴き手にまで汗の臭いが来そうな位燃えています。そんな曲とは裏腹に彼らはこのVCDの中で全編楽しげに演奏しています。基本的にはライブ形式の映像が多く、彼らの演奏風景はRock Saderd亡き今では非常に貴重なものであると言えましょう。普通モーラム・ルークトゥンのプロモーションビデオというのは1台のカメラで一つのステージで安っぽく撮られていることが多いのですが、そこはさすがに“ロック“とつくだけあって撮り方一つにもこだわっています。ドラムのヘッド部分に水を溜め叩く度にスプラッシュさせたり、どこかの倉庫らしき場所で演奏シーンを撮ったり、はたまたライブ映像を織り交ぜたりと耳からはモーラムでも目から入ってくるものはしっかりロックしています。現在ではKristyやPamerahなどモーラムやルークトゥンと洋楽をミックスさせたものが色々出回っていますが、Rock Saderdの場合、洋楽の度合いよりモーラムの度合いが強く,それが中高年の方にも気に入られる要素の一つになったのではと私は思います。あと、少し余談ですがカラオケVCDというのは左側が演奏、右側が歌と演奏となっている為、バック演奏が非常に分りやすいのも利点の一つでもあります。今までは聴き取れなかった歌の後ろでのギターのメロディやサムチャー(タイ音楽特有のリズム)が分ったりして2倍お得です。因みにRock Saderdのメンバーはジャケットに写っている3人がメインですが彼らに勝るとも劣らずのセンスと技術を持ったドラム、ベース、キーボード全員がいい仕事しています!とくにモーラムでチョッパー奏法を試みたベーシストは私の知る限りこのバンドが最初で最後なのでその辺も必見です。彼らの人気は依然高く、現在でも音源や映像は比較的入手しやすいと思います。その中でもこのVCDはモーラムの代表曲ばかりを集合させたアルバムですので、これを完璧に歌う事が出来ればタイのカラオケ屋さんで必ず人気者になれるとか...そろそろ本格的なモーラムを聴いてみたいと言う方には是非ともお薦めします! | |
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SUREレーベルルークトゥンユニット/SURE CHA
CHA CHA
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このアルバムでは多数のルークトゥンアーティストが参加してルークトゥンやモーラムのスタンダードをカバーしています。この手のシリーズは結構以前からタイで発売されているようで、私もこのシリーズ以外にも店頭で見かけたことがあります。Sure
Cha Cha Chaとしては現在4枚発売され、1と2、3と4、という具合に2枚ずつメンバーの組み合わせを若干変えて発表されていたように思います。そのどれもがアップテンポで明るく、これでもかこれでもかとたたみ掛けるサムチャーのリズムがチャトチャックでのウィークエンドマーケットの喧騒を彷彿させます。ただ、このアルバムが他のルークトゥンアルバムと違うところはバックの演奏を機械に頼ることなく、しかもバンド形式でヴォーカルも1発録りらしく臨場感溢れる音作りになっているところです。また各曲イントロは全く別のものにアレンジされている ものが多く、そこにはAORや80‘Sディスコっぽいものが取り入れられたりしているので皆さんがご存知の曲でもかなり新鮮感があります。1番の特筆すべき点は1と2に収められている曲中で男女が一曲通して歌う場合に主になるキーの転調です。前半後半で男女に分けられて歌っている部分で、多分声域の問題でやむを得ず転調しているのでしょうがその転調がとても気持ちいい部分にハマっています!これぞ偶然の賜物でしょう!あと、余談ですが4でプムプワンの曲を女性軍団が歌っています。全員プムプワンになりきって声のひっくり返り方とかも全員同じで結構笑えます。全編通して雰囲気的には”5 SAO FUN TALOB”に似ていますが、やはりモーラム・ルークトゥンをよりコミカルに、そして身近に感じさせるアルバムといえばこちらに軍杯が上がるのではないでしょうか。こういうことを日本で演歌の大御所がやってくれればもう少し日本の演歌界も変わる のではと思わせる1枚です。 |
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正統派ルークトゥン FON TANASUNTON(フォン・タナスントーン)
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今までは正統派のアーティストはあえて避けていましたが、今回は正統派ルークトゥンを紹介します。さて、ルークトゥンというジャンルはモーラムと同様、タイではオーソドックスなジャンルで分り易く言うと演歌や昭和時代のニューミュージックと言った感じです。このジャンルの歴史等は他のサイトなどでご覧頂くとしてここではあくまで音楽的な印象を基本にしていきましょう。ルークトゥンには日本の演歌の定番によく聴かれるスローでしっとりとしたメロディがあったり、またラテン音楽のような明るいアップテンポな曲やロックぽいタイトな8ビートの曲があったりと一人のアーティストの作品で様々な趣旨の曲が聴けます。昭和時代に全国のお茶の間を賑わせた「ザ・ベストテン」、あのノリが1枚の作品で繰り広げられているといったところでしょうか。そういった意味でルークトゥンというのはタイの大衆音楽であると言っても過言ではありません。またモーラムと違って1つのコード(和音)のみで曲が成り立つ事はないので、モーラムに抵抗がある人でもとっつきやすいのではないでしょうか?その中でも彼女の作品は正統派ルークトゥンを歌うアーティストの一人です。クセの無い声質でしっとりとした曲を歌う彼女の歌唱力は言うまでもありませんが、思わず聴き入ってしまうほどクリアでツヤがあり、それ故に歌詞が分らずとも思わず涙するほどです。勿論それにはバックの演奏の力もあります。 まず1曲目の出だしで聴かれるストリングスと泣きのギターソロは何故か、にっかつロマンポルノを彷彿させ、昭和50年代の華やかさに時折差し込む影を感じさせます。そしてケーンの音色からはじまる2曲目。もうケーンとくれば見た事が無くともイサーン地方の農村風景を思い浮かべてしまいます。5曲目では日本の演歌でも多用されるキメのフレーズが区切り区切りで使用されていますが、そこはルークトゥン。コード進行がルークトゥンなので懐かしい音ながら新しく聴こえます。3曲目、6曲目ではサムチャーが心地よく自然と足でリズムを取る自分に気づきます。7曲目ではしっとりとしたルークトゥンながらにブルーズの大御所”BB King”の「Darling,You know I love you」を彷彿させる明るいブルーズを感じます。本作でアップテンポの曲は10曲中8曲はしっとりと歌い上げるルークトゥンで、これ から憂鬱な梅雨の季節に突入する中で苛立つ心を癒してくれること間違いなしです。また彼女は以前紹介させていただいた”Sure Cha Cha Cha”のメンバーとしても活躍していまして、そちらでは他のルークトゥンアーティストと共に軽快な歌を歌って彼女の別の面を聴く事ができます。私個人の意見として彼女の作品はCDよりVCDで入手するほうが彼女の綺麗な顔立ちも楽しめて2倍お得な気がします。 |
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YUI YAATYER(ユイ・ヤートヤー)
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皆さんがタイに行かれたときに必ずどこかで耳にするタイ独自の音楽、モーラムとルークトゥン。日本で言うと、いわゆる演歌や民謡のような物ですが、日本のように伝統を次世代へと忠実に受け継がれているだけでなく、常に新しい音楽と融合して変化しつつあります。 ここで紹介するYui Yaat-yarも日本でモーラム・ルークトゥンに魅了された方はほぼ100%知っているくらい有名なルークトゥン歌手です。私自身も彼女の存在は知っていましたが、彼女のしっとりとした歌が苦手なもので彼女のアルバムも買おうと思うことが無かったのです。しかし、このアルバムはタイトルどおりダンスです!しかも従来の彼女が歌うルークトゥンではなくモーラムで、それをハウスやテクノと融合させた当時(アルバムには発表年度は記載されていませんが、私の知る限り1年以上前です)では実験的作品であると考えられます。現在はトンチャイらが新しいアルバムで似たような感じでやっていますが、それよりもっとトランス系に近い音になっています。男性ラップが分りやすい初期型ラップしたり、”Say HO! Say HO! HO!”と言うあたりは少し時代を感じますが、全曲にわたって使用されているサンプリングは興味深く、コミカルな物やハウスでよく使用されるドラム音をタイの民族楽器のサンプリングとをグルーヴ感を損なわずうまく組み合わせてジャンルの壁を見事にぶち壊しています。何よりしっかりと技術が身に付いた歌手がこういうタイプの歌を歌っている分、全編通してモーラム・ルークトゥンを聞いたことがない方でも比較的とっつきやすい作品に仕上がっています。 手に入れるのは少々困難とは思いますが、特にDJの方は是非とも手に入れてクラブでガンガンに鳴らしていただければと思う次第であります。 |
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青い目のモーラム歌手・KRISTY GIBSON(クリスティー)
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日本でも昭和時代にいろいろ外人歌手がお茶の間を賑わせていましたが、現在タイでもファラン(外人)によるモーラム歌手が存在するんです。それがこのKristy。それにしても欧米人の他民族文化の吸収力というのは本当に凄いと痛感させられます。1st,2ndともに
モーラムの代表曲をしっかりと自らの音楽文化に基づいたアレンジが施された形で収められています。このコーナーでもモーラム・ルークトゥンを他ジャンルと融合させたものを紹介させていただいていますが、その大半はタイ側から見た洋楽との融合であり、彼女のように逆の立場からの融合というのは私の知る限り彼女以外には存在しないでしょう。彼女のコブシは確かにバンイェーンラッゲーンら大御所と比較すると確かに甘いような気もしますがそれも愛嬌、またその部分を楽曲のアレンジと伸びの良い声質で見事にカバーしています。 1stでは重厚なギター音がケーンと絡み、そこに重いリズムが乗っかる1曲目や7曲目に見られるケーン、ソー等のタイ民族楽器とファンキーなスラップベースが織り成すモーラムなどラテンロック風のアレンジを中心とし、全体的な印象はSANTANAが女性ヴォーカルを向かえタイ語で歌わせたらこうなるのかな?といった感じです。 2ndではいい意味で期待を裏切り、ソウルミュージックとルークトゥンとの融合を成功させ更に彼女の音楽性の幅の広さを感じさせます。 こちらは、オーティス・レディングのバックメンバーがルークトゥンに目覚め演奏したらこうなるのかな?といった感じでしょうか。どちらの作品も歌詞が分らずそろそろ音だけではもう飽きてきたかな?と思う方に特にお薦めします。因みにタイ人の間でも彼女の評判は良いみたいで彼女のアルバムジャケットを街で見せると皆が「こいつはいいよぉ〜!」というくらいタイ人も認める実力派歌手であることも付け加えておきます。 |
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